スタッフA 慧舟會③

‍銀座にあった慧舟會の事務所内、久保社長の前に戸井田、大澤、私の三人が直立して並んでいる。
この頃、三人セットで度々呼びつけられては色々怒られていた。
この日もそうでした。

久保社長「戸井田、強くなんのに一番必要なのはなんだ!」

これは簡単な質問である。久保社長が待っている言葉は〝努力です″とか〝練習です″だからだ。わかりきっている。慧舟會は木村先生の三倍努力の意志を引き継いでいるのだ。間違うことはあるまい。それを言えば無難にいくのだ。

戸井田「適度な練習と適度な休息です。」

久保社長が足下にあったゴミ箱を蹴り飛ばす。
吹っ飛ぶゴミ箱。

久保社長「てめえ舐めてんのか、この野郎っ!」

戸井田は何故その言葉を選択したのだろう。この場で真実を語るメリットはなにも無いはずだ。二択でもなく一択に近いごく簡単なクイズだったはず。無難に済ませればいいだけだ。

しかし、久保社長がゴミ箱を蹴り飛ばし、てめえ舐めてんのかっ!!とブチ切れた直後に、

久保社長「ふふっ!オメェはしょうがねえなぁ。」

確かにあのとき社長は〝ふふっ″と笑ったのだ。
人の怒りはあるラインを超えると
笑いに変わってしまうのか?
何から何まで、凡人の私には理解出来ない事ばかりである。戸井田の言葉も社長のリアクションも。

自己主張を貫いた戸井田は今、トイカツグループを作り上げ、
大澤は慧舟會HEARTSの代表である。